この写真は2010年11月にHCLフォトギャラリー新宿御苑で発表したものです。「フォトコン」2010年11月号に口絵掲載されました。京都写真美術館アーカイブスに収蔵されています(下線の文字をクリックしてください)
日本の都市における電線は欧米には見られない独自の特徴がある。
あるフランス人は、「日本日常三景」の一つとして「電信柱と電線」を選ぶと記述している。
電線は、かつては東京の空を網の目のように覆い、工場の煙突と同様に都市の活力を示す象徴と考えられていた。
ところが今や、電線は都市の景観を壊し、電柱は道路の端で人や車の通行を妨げる邪魔者として扱われている。このため、電線の地中化が進められ、東京の表通りでは姿を消しつつある。
けれども電線は、街を睥睨しているシンボルのような建物にも、空に聳える高層ビルにも、しっかりと寄り添い、まるで蜘蛛の糸のようにまとわりついている。瀟洒な住宅についても同じである。
今や電線は、エネルギーだけでなく地球上のあらゆる情報をも伝えており、無数に延びたその先には人間の活動の場がある。この線が人々の営みを支えており、社会生活を支配しているといえるのかもしれない。
東京を特徴付けているものの一つとして電線を捉えてみた。