「風蝕の造形」
都市の構成要因の大部分は建築物であり、それは主に壁により構成されている。この壁も完成した時点から消滅の過程がはじまる。風雨に曝され、夏の灼熱の暑さ、厳寒の冷気などを経験し崩壊が進行する。そして、壁には、亀裂、細裂が走り罅割れ、退色し、蝕まれ、時には泪を流したような様々な姿を呈することになる。これを醜いという人もあるかもしれない。しかしそれは、崩壊過程の中で、時の流れを刻み込み、時間にまとわりついている澱のようなもの表している。さらに、光があたることにより輝き、きらめき昇華する。壁は、人の様々な営み見つめながら変化してゆく。その崩壊の時の流れと滅びの「美」を写し取りたいと試みたのがこれらの写真である。撮影場所はいずれも東京区部である。
この作品は2019年12月5日(木)〜11日(水)アイデムフォトギャラリー「シリウス」(新宿区新宿1-4-10)で発表しました。